モメンタムの応用

序言

概ね成功する人は、時代の流れを巧みに乗れた人である。言わば「時代が英雄を作る」。投資も戦場の如く、特に長期投資で、トレンドの判断が誤ると、時間の推移に伴って、損が拡大するケースが多い。ダウ氏理論の基本は「……投資家にとって、最も重要なことは、市場の長期的な動向を把握することである」。如何に長期トレンドの「方向」と「転換点」を正確に捉えるか、我々は様々な技術を融合して、試行錯誤により、独創的な技法を開発した。この技法は2002年4月に、「国際テクニカル・アナリスト連盟」の審査を経て、世界初の「最先端技法」として認定されて、『国際検定テクニカル・アナリスト(MFTA)』の資格が授与された(Master of Financial Technical Analysis)。これがサイドの誇りで、独創的な知的財産権である。同技法を用いて、毎月の第5営業日までに、「世界主要市場の現状と今後の趨勢」を刊行し、皆様へご提供する。

年間は春、夏、秋、冬があり、月間は新月から満月になり、日としては、昼と夜になる。大自然にはさまざまなサイクルが存在し、商品市場としても、トレンドを見れば、市場の波動には一定の法則がある。分かりやすく説明するため、自然法則を照らしながら、市場サイクルについて、下記のような概念図を作成した。

概念図のモメンタムを見ると、次のことがはっきりと読み取れる。

  1. 1.A点→B点まで上昇相場だが、a”点から市場の上昇速度が徐々に低下した。
  2. B点→C点まで下落相場だが、b”点から市場の下落速度が徐々に低下した。
  3. モメンタムが下から上へ、ゼロラインを突き抜けると、「絶望」の限界で、「黎明の曙光」になりやすい(a点とc点をご参照)。
  4. モメンタムが上から下へ、ゼロラインを割り込むと、「狂信」の限界で「暮れの夕日」になりやすい(b点をご参照)。

本サイトで作成したモメンタムの目的は数学の領域で、百年前にダウ氏が指摘した長期トレンドを探るものである。この技法は株式市場のみならず、為替レート、先物、不動産など、様々な市場価格にも適用される。モメンタム分析の価値について、下記のように例を挙げて説明したい。

1.世界の上昇市場を狙う(下図)

91年1月~98年8月まで、NYダウのモメンタムは約8年間(92ヶ月)、ほぼ一貫してゼロラインの上に滞在し、上昇トレンドの継続を的確に示唆している。この間はNYダウの株価が2736.39㌦→7539.07㌦まで、2.76倍も上昇した。しかし同時期に日経225の株価が23293.14→14107.89円まで、約4割近くも下落した。当時このチャートがあれば、日本の投資家は、国内で苦労する必要はなく、米国の投資信託のみ運用しても、高いパフォーマンスが得られる筈である。現在は新商品の登場により、上昇しているETFのモメンタムがゼロラインの上で推移している指数を購入すれば、指数と同等な投資効果が得られる。ETFは指数と連動する商品で、構成銘柄の入れ替えにより、長持ちしても、倒産のリスクはほぼないものである。長期投資した場合、為替レートと株式市場のモメンタムを見ながら、挑戦した方が、一層好パフォーマンスになると思う。

2.上昇市場の萌芽を捉え!(上図)

97年後半から98年10月にかけて、世界的な金融パニックが起きた。その影響により、98年8月末にNYダウのモメンタムが、ゼロラインの下に転じて、指数の下落を示唆した。だが、10月末に金融パニックの最中で、僅か2ヶ月で、モメンタムが再びゼロラインを突破し、『黎明の曙光』として夜明けを示唆した。その後3ヶ月の間に、モメンタム分析から「世界株式市場のセンチメントが好転」、「アジア株反騰」、「世界経済が最悪から脱出」と、いち早く様々な変化をキャッチした。故にIT相場の初期段階で、市場へ踏み込むことができて、大勝利を押さえた。もしこのチャートがなかった場合、当時の投資判断は相当に難しい。

3.機敏な撤退でリスクを回避(下図)

主要国の株式市場は、各国のマーケットに対し影響力が大きい。特に主要市場が倒れると、その他の市場も追随して、下落になるケースが多い。他方通信革命と資金の瞬時流動により、各国の株式市場は徐々に一つのマーケットに融合している。世界同時株高・同時株安の現象は過去より一層鮮明化になった。故に主要市場の変化を常に監視することは非常に重要な課題になる。

実例で言うと、98年10月~2000年3月まで、米ナスダック市場は3倍強にも上昇した(1693㌦→5132㌦)。この間米国のネット指数は約5倍以上も急騰した(下图:「米国ネット指数のモメンタム」ご参照)。時代の背景を受けて、日本の代表的なIT株→ヤフーは、38万5千円→1億6790万円まで、436倍強も上昇した(無償分割後の逆算)。だが2000年2月18日、IT株の最盛期に、NYダウのモメンタムが静かにゼロラインを割り込み、世界同時株高に対し『最初の警鐘』を鳴らした(上图:NYダウのモメンタムを参照)。その後3月8日、NYダウは一時的にリバウンドしたが、長期トレンドの持ち直しに失敗したので、ナスダック市場が急落を引き起こした。市場連鎖により世界の株式市場も一転して潰された。当時新型のモメンタム分析により、我々が2000年2月18日に、緊急なコメントで、顧客に売りを提言した。しかし熾烈な利益を追求する最中に、数多くの投資家が含み益に酔ってしまった。特に信用取引していたお客が、躊躇したところで、莫大な資産が一気に失ってしまった。


4.上昇第三波を狙う(下図)

モメンタム分析で、資金運用した場合、トレンドが長ければ、長い程パフォーマンスは良いものである。この特徴に着目して、エリオットの波動論で、上昇相場の第Ⅲ波を狙った方が、成功の秘訣とも言える。エリオット波動によると、第3波が最も利益を出せる波動である。実例で言うと2000年3月以降、各国の株価が下落の最中に、上海B株市場のモメンタムが、ゼロラインの近辺で急騰した(2段高の発信)。時期的にはエリオット氏に指摘された第3波の始動である(下图1ご参照)。その後B株市場が国内の投資家へ開放に伴って、指数は6倍強も上昇した。この波動の終結は2001年7月27日である。当日中国の大型指数、上海A株の終値が2170ptで、試算されたモメンタムがマイナスになり、これがB株の急騰に対し「最初の警鐘」と確認された(下图2ご参照)。

5.総合判断で長期調整の再確認(下図)

モメンタム分析として、短期波動により損切が多い。如何に損切を最小限に、利益を最大に目指すか、下記の2つ例で説明したい。

1)パターン分析で騙しシグナルの回避

 2004年~2015年まで上海A 株が、4つの区間として見分けられる。

  1. A 区のモメンタムがゼロラインの下でベアと確認された(-25%)
  2. C区のモメンタムがゼロラインの下でベアと確認された(-43%)。
  3. B 区のモメンタムがゼロラインの上でブルと確認した(+2.7倍)。
  4. しかし、D区では、株価の上下幅が徐々に縮小し、モメンタムがゼロラインの近辺で頻繁に上下し騙しシグナルが多発生した。時間の推移に従て、株価が大型な三角持合い相場になりづつ。このようなケースになると、モメンタム分析は無力で、パターン分析を重視すべきだと思う。他方留意して置きたいことは、当時先進国の株式市場は、米国を初め世界的な株高が鮮明になり、相場の連動性から見ると、外的な要因が整えている。内的な要因から見ても、5年以上に渡り経済の高度成長に蓄積したエネルギーが、一触側即発な状態である。何時上離れるか、判断の基準は三角形の上放れと、モメンタムの買いシグナルが、同時発信した時に、信憑性が高いシグナルと判断される。

2)モメンタムとMACDの総合判断

大型な三角型のみならず、横ばいや、中小型の調整も、時折困惑される。この場合、リード役の指数に対し、MACDやRSI等の伝統的な技法を用いて、総合判断した方が大事なことである。

MACDとは
Moving Average Convergence & Divergence(移動平均終息、発散法)。

MACDの算式:
A)MACDライン(青線)=12ヶ月の平滑移動平均-26ヶ月の平滑移動平均線。
B)シグナルライン(赤線)=上記MACD線の9ヶ月の平滑移動平均線。

MACDの特徴:

  1.  近年の研究によると、MACDのクロスオーバーが非常に優れた確認指標である。尚ゼロラインを境線として、上下何れか乖離率が高いほど、発生したシグナルの信憑性も高い。
  2. MACDは他指標よりいち早くトレンド転換を反応するので。過敏反応も有り得る。
  3. MACDのクロスオーバーが示現しない限り、トレンドは今までのように持続する確率が高い。

MACDとモメンタム分析の比較:
モメンタムとMACD分析の長所と短所を理解するため、日経225のデータを用いて、同じ時間軸(2003年1月~2008年12月末)でグラフを作成し、比較して見ると(下图参照)。

 1 4年以上に亘った上昇相場として、二つ技法がA点からB点まで、買い信号と売り信号は、何れも的確に捉えた。他方両技法が共にC点で、2箇所の騙しシグナルが確認された。仮に一枚のチャートしかなかった場合、シグナルが発生した時点で、真贋の判定がし難い。しかし両技法を併用して、何れも同じ方向を示唆するまで待期したら、騙しシグナルの真贋が一目で判定ができる。言い換えれば、異なる指標の同期に、発信したシグナルの信憑性が一層高くなる。
 2 実際もっと長いケースで見ると、MACDは他指標より、機敏に反応するので、過敏反応により、騙しシグナルも多い。しかし、モメンタムと併用した場合、MACDの短所は、逆に相場の強弱感や、モメンタム転換の前兆として大切な「警戒信号」なる。

相場は上昇、下落、そして中間調整で、三つのパターンがある。モメンタム分析は市場の勢いを図るものであり、上昇と下落相場には、非常に優れた技法である。だが中間調整には、モメンタムの騙しシグナルが多い。このようなケースに当たると、伝統的な技法と融合して判断すると、騙しシグナルが大幅に回避ができると思う。